September 18, 2006

微笑返し

新カテゴリ「微笑返し」を追加。
学生時代、社会問題を考えるサークルに入っていた。年間最大のイベントが大学祭。毎年三回生が中心となって企画を練る。僕が三回生の時の全体テーマは「民族問題」。時は1989年。忘れもしない、ベルリンの壁が崩壊した年だ。
大学祭企画では、小さい教室を一つ借りてイベントをする。僕はその教室企画の責任者だった。ネタがネタだし、時代はバブル。時代のせいかどうかは知らないが、当時の僕は、サークルの後輩たちの、社会問題に対する思考力の乏しさに頭を悩ませていた。しかし、モノは考えよう。「社会問題に対する思考力が乏しい」ということ自体が、旬で身近な社会問題に他ならないじゃないか。それならば、その身近な問題に対峙することなくして、何が「社会問題を考える」だと。
つまりはこうだ。「社会問題に対する思考力が乏しい」のではなく、「社会問題に自らのリソース(資源)を向けようとするモチベーション(動機付け)が乏しい」ということなのだ。

そこで、教室企画の目標を、「身近であること」、「ああ、そこのあなた、あなたも民族問題なのですよ」と語りかけられる内容にすることに置いた。謳い文句を「無用な怒りを微笑返し」と(責任者権限で勝手に)決め、あとは後輩たちに、パネルディスカッションをしろ、ついては、勉強して原稿をまとめて持ってこいと丸投げした。
なお、「微笑返し」はキャンディーズから拝借した、などということは、同時代の人間には言うまでもないだろう。

さて、その丸投げした結果を一言で言えば「・・・」(無言かよ)。
「世界のあちこちでこんなヒドいことが行われています」といった「お勉強の成果」は並んでいる。でも、それは国連の仕事だろ?まず、おまえら自身が、自分たちの問題としてリアリズムを感じずして、どうして、大学祭に<遊びに>来た人たちをつかまえて、「あの〜、あなたも民族問題なんですよ」などと言えるものか。なんてったって、我がニッポンはバブルど真ん中なんだぜ。と、突き返したのが大学祭前日の夜。哀れ後輩たちは、なぜこんなところに居るの?とボヤきたくもなる一人の体育会系な先輩(エッヘン俺のことさ)にシバかれて、(ただでさえ徹夜続きなのに)原稿の練り直し。
一方、責任者の私は、ズバ抜けた知識人のYS氏(別名F)の力を借りて、ヤッツケでネタを繰り、初日をなんとかやり繰りした。あの頃、み〜んな本当によく起きてたなあ。

まあ、学生時代のことはいいのだ。こんなに書いておいて、「いいのだ」はないかもしれないが、「微笑返し」というカテゴリの由来くらいは書いておかなければイケナイと思ったから書いた。
民族問題のややこい点の一つは、起源の根深い怒りの連鎖を断ち切ることの難しさだ。「怒る」「恨む」という能力は、どう振り払おうったって人間に備わってしまっている。しかし、それを「目には目を」の報復で返せば、延々と報復のラリーが続くだけだ。ではどうする?
「それが人間だ」とクールに悟ったことを言うか(意外とインテリにはこういう輩が多い)、「その連鎖を断ち切る力だって、人間は持っているハズだ」と悩むか。前者は楽チンだ。但し、火の粉が自分の身に降りかかるまではね。かたや後者は、自分の身に降りかかろうが降りかかるまいが、しんどい。

あ〜、長々とエラそうなことを書いたな。前説はもうこの辺でいいか。やっと今日の本題だ。

実は、ある事務所に協力してもらって、明日(19日)中にやってしまわなければいけない事務作業があったのだ。で、そこの担当者が「19日は都合が悪くなったので、18日の午前中にやらせてもらっていいですか〜?」とのことで、敬老の日の今日、こちらも朝から待機していたのだ。先方からメイルが来たのがお昼前。その内容がちょっと「???」だったので、その旨返信をし、しばらく待ったが反応がない。仕方がないので、事務所に電話をすると、担当者の上司であるそこの所長が出た。明らかに機嫌の悪い声。平日に仕事で会う時のお愛想はどこへやら。事情を話すと、「今日は祝日ですけど?」と詰問調でこちらが怒られてしまった。気分悪。そっちの担当者の都合で、こっちが休日に時間をとってやってるっての。もひとつ言えば(言いたかないけど)、どっちかっていうとこっちがお客さんだっての。

「おい、おっさん」という言葉をグッと飲み込み、できるだけ腰の低いトーンで「はっ、休日に大変失礼いたしました」と謝る私。これが今日のささやかな「微笑返し」ということにしておく。「はいはい」(ブチっ)と電話は切られたけどね。
(どうも担当者は、所長とは違う居場所で作業をしていたらしい、、、)


Posted by azure at 21:53:18 | from category: 微笑返し | DISALLOWED (TrackBack) TrackBacks
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