May 17, 2007

哀れ運動部長

5/16付の毎日新聞朝刊に、「本質欠くバッシング」と題して、毎日新聞の運動部長が高校野球・特待生問題について書いている。

素直に読むと、問題の「本質」とは「有力選手を広告塔にしたい私学経営者」や「暗躍するブローカー」の存在だと主張しているようだ。そして、それらが問題となる理由として、例えば「公立校で、何の特典もなく部活動に打ち込んでいる生徒の目に特待生はどう映るか。特殊な目で見る、一種の差別意識が芽生えてもおかしくない」などと書いている。

あほくさ。

こんな寝言しか書けなくても、大企業の部長になれるのか、はたまた、大企業の部長だから、こんな寝言しか書けないのか。おそらく後者だろう。

いやしくも情報を商売にしている新聞屋が「特待生が常態化しているなんて知らなかった」などとは口が裂けても言えないし、「春のセンバツ」を主催している毎日新聞社が「野球憲章を認識していなかった」と言い訳をするわけにもいかない。「運動部長」つったって、当の毎日新聞社の社員である。ついこの前のセンバツ優勝校も「有力選手を広告塔にしたい私学」の一つだったことには一切触れずに、ただ高野連を擁護するのが目的の、批判の目をそらせるためだけの作文を書かせられたのだろう。社命によるのか、愛社精神からかは知らないが。

かわいそうに。このおじさんは、気持ちのまるでこもっていない、この惨めな作文を、入社当時の自分に読んで聞かせてやることができるだろうか。まあ無理やろな。

高校野球を物語化し、有力選手が広告塔足り得る環境を作り、高校野球を「売り物」にしてきたのは、どこのどいつだ。「批判するな」と言う前に、まずは「ごめんなさい」だろう。問題の当事者が開き直ってどうする。

運動部長と言うからには、過去に何らかのスポーツをやっていたのだろうが、おそらく忙し過ぎて、大事なことを忘れてしまったに違いない。野球人の本質は、「同じ高校生なのにお金をもらってるなんて許せない」などではない。「三振した。くっそー」だ。

寝言を言ってるヒマがあったら、グラウンドに出ろ。そしてバッターボックスに立ってみろ。ピッチャーと相対した時、特待生だのなんだのといった意識などない。「絶対に抑えてやる」と思っているピッチャーと、「絶対に打ったる」と思っているバッターがいるだけだ。


May 16, 2007

母校ガンバレ!

今週末(5/20)、母校(金沢泉丘)が、石川県立球場で招待試合をするそうだ。相手はなんと早稲田実業。昨夏の覇者だ。

臆せず闘え。絶対に打ったると思って打席に立て。そして、振り抜け。

今を遡ること24年前の夏休み。僕たちは大阪遠征に行った。生まれて初めて甲子園を見た。試合も観戦した。中京対池田戦。当時の超高校級同士、野中と水野の投げ合いだった。興奮した。

そして、上宮高校と練習試合をした。言うまでもない。大阪の強豪だ。投手は長身左腕の江本。翌年のドラフト4位で中日ドラゴンズに指名された投手だ。速かった。でも、僕はレフト前にヒットを打った。一番打者は、後にヤクルトスワローズに入った苫篠だった。出塁すると、セカンドを守っていた僕のすぐ目の前までリードを取る。うちのピッチャーが何度牽制球を放っても戻る。そして打者に向かって投げると、セカンドベースカバーに入るのがバカバカしいくらい楽々と盗塁された。驚いた。レベルの違いを痛感させられながら、当然のように負けた。負けはしたけれども、僕ら田舎チームなりに食らいついて、壊れた試合にはならなかった。

いい思い出だ。

あの頃と同じ気持ちで、「もっと上手くなりたい」「もっと強くなりたい」と、今でもバットを振り、ボールを放っている。大阪の野球小僧に負けるもんか。

打倒早実!ガンバレ、イズミ。

May 09, 2007

高校野球特待生問題考

金沢に尾山台という私立の高校がある。20数年前には、受験では最後の最後の滑り止め、野球の大会では一回戦コールド負けが当たり前、つまり勉強もスポーツも全然ダメな学校だった。

金沢を離れてしばらく経った頃だったと記憶する。旧友と久しぶりに会い、会話に尾山台が出てきた。「さこちん、知っとるけ?尾山台って今、進学校ねんぞ。もうビックリや」。

僕の高校時代のあだ名は「さこちん」だったわけだ。それはともかく、よりにもよって、尾山台が「進学校」とは、過去を知っている者として、本当に、にわかには信じ難い話だった。そう聞いてから、夏の県予選の結果を追っていると(それまでは気にも留めていなかった)、甲子園には出ないまでも、あの安パイだった学校が、大会を勝ち進むようになっている。学校経営者が代わったのか、それとも変わったのかは知らないけれども、もう僕の知っている「尾山台高校」でないことは間違いない。ともあれ、傍目には、尾山台は生まれ変わったように見える。

さて、特待生問題である。

石川県では、星稜をはじめ、私立高校があらかた該当しているようだ。件の尾山台も名前が挙がっていた。やっぱりな。伝統もない弱小校が強くなるには、それなりに選手が集まる環境を急ぎ作らなければいけない。それが「特待生」というやり方だったワケだ。才能がその個人の資質に拠るのは当然だが、伸びるかどうかは環境との相性が大きい。高校球児にとっての最大の環境とは、「指導者」だ。まず良い指導者を連れてきて、次に、「できれば良い環境で野球をやりたい」と思っている<野球少年>を勧誘する。そうすれば、石川の高校野球レベルでは、ベスト8の常連くらいにはなれるだろう。俺が監督をやっても、それくらいの自信はあるな。なんちゃって。

今、なぜ「特待生」が問題になっているのか。それは高野連が<文書の上で>禁止しているからだ。では、なぜ高野連は特待生を禁止するのか。本をただせば、越境入学を防ぐのが目的だった。ならば、真に問題にすべきは「越境入学」の方だろう。でも、そんな学校経営にまで踏み込んだ制約を、たかが高野連ができるハズもない。それで、「特待生禁止」というお茶を濁したような決まりを作ったわけだ。

問題がこじれているのは、高野連が無責任だからだ。「特待生を禁止する」というルールを作ったことで、世間に向けて、責任を果たしたようなポーズを取り、一方では、その<不法な>特待生達の活躍で盛り上がっている高校野球人気に胡坐をかいたまま、ルールが徹底されるべくろくな努力もせずに、事実上放置してきた。そして、自らがそのルールを形骸化させていたにもかかわらず、世間のざわめきに動揺して慌てふためいている。いい年こいて、ウソ泣きしたら勘弁してもらえるとでも思っているのか。みっともない。

ルールは、決めた側が責任を持って適正に運用することで、初めて「守るべきルール」になる。ことここに及んで、いまさら、ルールを守らなかった場合の罰を議論しているようでは、「『特待生禁止』というルールは、文書化はされたが、まだ施行されていない状態だった」と言われても仕方ないだろう。

まずやるべきは、「無責任なルールを定めてごめんなさい」だ。そして、一旦、「禁止ルール」を形式的に取り下げることだ。当然、当該校は、特待生を除外したり大会への参加辞退をする必要もない。だって、まだ施行されていないんだもの。こんな簡単な認識がなぜできないか。

特待生や越境入学を禁止することは、一片の文書通知で済む問題ではなく、「高校の部活動として野球をやっている」という仕組み自体が問い直されるほどの大問題だ。つまり、高野連は、自らの存在意義を賭けて特待生や越境入学を「禁止」しなければいけない。わかってんのかなあ。