October 02, 2006

安倍さんの中身-2

安倍首相の所信表明演説全文を新聞で読んだ。安倍さん個人はともかく、ブレーンはさすがに優秀だ。率直に、なかなかイケている作文だと思った。
仕事柄、自分でドキュメントを書くことはあるが、人の書いたドキュメントをレビューすることも少なくない。仕事以外の「パーソナル・アイデンティティ」である野球やソフトボールでも、チームメイトに技術指導をする立場だ。人に説明をする際、自分に課している大事なポイントは、「目的・目標」「現状認識」「手段・工夫」の三つ。つまり、「こうなりたいけど、今こうだから、こうしてみよう」ということが明確であることだ。

所信表明なんだから、「今こうだから、こうしてみよう」といった各論に茶々を入れるのはやめておこう。安倍さんが目標としている「美しい国」。これをどう説明するかが、なんと言っても、今回の所信表明のキモだ。箇条書きにしてみるか。

1. 文化、伝統、自然、歴史を大切にする国
2. 自由な社会を基本とし、規律を知る、凛とした国
3. 未来へ向かって成長するエネルギーを持ち続ける国
4. 世界に信頼され、尊敬され、愛される、リーダーシップのある国

原点の表明として明確だ。悪くない。今後、安倍さんの言動に対する評価は、この四項目を柱にして「それは『美しい国』なのか?」と問えばいい。そして、<美しい国に住む民の>「もう少し説明してもらえまいか」との真剣な思いを、小泉さんと違って、しっかりと受け止めてほしい。肩透かしばかりで逃げまくった小泉さんのようになってしまったら、せっかくのなかなかイケている四項目が泣いてしまう。

テレビのニュースでは演説している姿を拝見した。安倍さん、演説はかなりヘタ。あのヘタさは天性のものやろか。今後、致命的なウィークポイントになるかもしれん。
もちろん、「首相」というのは、安倍さん個人のことでは決してない。ブレーンや取り巻き、そして内閣を構成している全体でもって「安倍首相」という存在であり役割だ。そして、看板として表に立っている(立たされている?)安倍晋三さん個人の力量が、求められている役割とはミスマッチなんだろう。
文字を追いながら読んでみると、とても良い作文なのに、演説を聴くと、賢くなさそうな浮遊感が漂う。無理して背伸びして身の丈に合っていない感じ。それはきっと、自分自身の言葉ではないからだろう。

個人的な勘だけれども、今のニッポンの政治状況で最善な構成と役割分担は、自民党と民主党が連立与党を組み、小沢一郎さんがトップを張り、安倍さんはそのサポートをするというもの。公明党は、代表も替わったことだし、結党の原点に立ち返りたいならば、下野して一度頭を冷やした方がいい。そして、共産、社民、そして民主の左寄りの人たちと連立野党を組む。ま、無理やろけど。公明、共産、社民、いずれも支持者が被害妄想的で依怙地やからな。まあそこは、無理なら無理で、せめて小沢さんにはもうしばらく健康でいていただいて、安倍さん個人を叩いて矯めて、ニッポンの人材として鍛えてあげてほしい。それでもし磨かれなければ、安倍さんの政治は、飾り付けばかりで見掛け倒しの政治になってしまうだろう。

子供の頃、家にあった本の中で、なぜか「オズの魔法使い」ばかり何度も何度も読んでいた。安倍政権が「オズの魔法使い内閣」になってしまいませんように。